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■一目惚れに乾杯■

 室長は呆れてるのか、悲しんでいるのか怒っているのか、あるいは喜んでいるのか、まったくよくわからないひどく複雑な表情をして僕を見下ろしている。
「お詫びはわかったけど、それに俺とだとできるっていうのは嬉しいが、今ので十回目だ。それがどういうことかわかっているのか?」
「はい。キス十回につきH一回ですよね」
「そう。わかっているんだ」
室長の溜め息が僕の顔にかかる。
「じゃあ、いいんだな。俺とのセックス……」
「はい。男に二言はないです」
 僕は微笑んだ。ずっとずっと僅かだけ酔っ払っていない理性が、いいのか? まずいぞ? 今ならまだ引き返せると囁いていたけれど、もう雑音にしか聞こえなくなっていた。
「言っとくが、俺はマジだ。今まで、酔っ払いのやってることだから我慢しよう。なかったことにしようって思ってたが、もう……」
 室長の声はそこで途絶えた。かわりに唇が僕の唇の上に降ってくる。そして今までの十回分とはまるで違うキスを僕にくれる。
 ただ唇が合わさるだけのキスじゃない。室長の舌は僕の唇を割り、あっという間に口腔に滑り込んでくる。
 戸惑う僕の舌を捕らえ、絡めて吸ったり、上顎を擦ったりされて、僕は身体のどこかが重くなり、そのくせふわふわと浮いた感じに惑う。ねっとりと濃厚なキスにアルコールとは違う酩酊に襲われる。
 時折肌に触れる室長の眼鏡のフレームの冷たささえ気持ちいい。
 存分に僕の口を味わった室長の唇が僕の首筋を捕らえる。ゆっくりと舌先を這わされて、僕は全身を火照らせた。
 なんだかとても気持ちがよかった。別れた彼女としている時よりずっとずっと気持ちがいい。 
 いつの間にか僕は着ていた服を脱がされていた。見ると、室長も裸になっている。室長は着やせするたちらしく、明るい蛍光灯の下で見る身体には程よい筋肉がついていた。
 しかも、もう勃っていた。
 僕? 僕のせいで勃起してるの? 僕に欲情しているの?
 そう思ったとたん、僕の心臓がばくばくいいだした。
 さらに、今からこの逞しい身体と大きな剛直を持つ男に抱かれるんだと考えると、不安になのか、期待になのかわからないけれど身体が震えだした。
 そんな僕の震えをなだめるように、室長は身体中にキスの雨を降らせてくる。それは啄むようなキスから次第に、舌全体を使ったねっとりとしたものに変わり、乳首を吸われた時には、僕の震えは完全に喜びのそれになっていた。
 室長は僕の乳首を丹念に舐めあげてくれる。吸ったり、舌先で転がしたり。指まで使って、軽く潰されたり。
 だから今まで彼女にされても感じなかった乳首が、こんなにも感じるものだと初めて知った。
「ふっ、あっ……」
 軽く歯を立てられ、僕は自分の口から女のような甘い声が漏れるのを聞いていた。
 自分の声と室長の舌にあおられて、僕は全身を痺れさせていた。腰のあたりが特に痺れ、そこから指先や爪先に、快感が走る。
 室長の太腿に僕のモノが擦れ、それがまた僕に新たな熱さをもたらす。          
 室長のモノもさっき見た時よりさらに硬くなっていて、先端のぬるぬるが僕の足や腹に
 触れ、僕の汗と溶け合う。
「もう一度聞く。本当にいいのか?」
 室長はかけていた眼鏡を外し、僕の瞳をじっと覗き込んできた。
 とっても綺麗な目だ。眼鏡を外したほうが室長の美貌が引き立つ。
「だって……。約束だから……」
 そう。約束だ。 
 それにもう僕だって我慢できない。なんでこんなに感じちゃっているのかわからないけれど、僕の前だって室長のモノ以上に切なく張り詰めて、先走りを溢れさせている。
「約束?」
 ふっと、室長の顔に翳りがさす。
「ただの約束なら無理しなくていい」
 なんで今更そんなことを言うんだと僕は悲しくなる。
「でも赦さないって……。言った。言ったくせにどうして?」
 つい咎めるように言って、僕は僕の昂ぶりを室長の太腿に擦りつけた。僕だってこんなになっているって室長に知らせるために。
「僕……、僕……」
 身体が熱い。生理的にもやもやして疼いている以上に熱い。心も同じくらい疼いている。
「室長になら何されてもいい……」
 自然と口を付いて出た言葉に僕自身がはっとした。でもこれはきっと本心だ。
「それは……っ……」
 室長の目が見開かれ、それから徐々に柔らかく細められた。
「後で文句を言っても知らないぞ」
「言わない。言わな……い……っから……」
 僕はもどかしい身体と心をなんとかしたくて室長の背中に両手を回した。
 そのまま腰の位置を少し変えて、室長のモノに自身を擦り付けて腰を蠢かせた。
「くっ……。そんなにあおるな」
 室長の苦笑すら僕の腰に響いて、僕は背中に回した両手に力を込め、さらに自分のモノを室長に押し付ける。
「そんなに気持ちよくなりたいか?」
 僕の動きに応えながら室長が聞いてきた。僕は熱い息を吐きながら大きく頷く。それを見て室長は微笑み、そっと僕のモノに指を絡めて、室長のモノと一緒に握ってきた。
「あぁっ」
 たったそれだけのことで僕の口からは信じられないくらい高いよがり声が上がった。

一目惚れに乾杯より

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