源氏物語や番外編や書下ろし

■チョコで乾杯■

 正月明けの出勤第一日目は、まるっきり気合いが入らない。特にお昼を摂った直後の僕は眠くって眠くって、本当に今にも眠りそうだった。

 社員食堂の外、廊下の一画に設けられた喫煙ルームのソファーで僕は、食後くらいにしか吸わない煙草を吸い終わり、あくびを連発していた。

 その、大きく開いた口にいきなり何かを放り込まれた。

「んっ? 何?」

 慌てて僕は口の中身を吐き出そうとしたが、それは甘いチョコレートで、既に僕の口の中で溶け始めていた。

「はは、あんまり大口開けてたからつい放り込んじゃった。竹中ってば無防備過ぎ」

 そう言って、僕の口にチョコを放り込んだ今野さんが僕の目の前で笑っていた。

 今野さんは、僕のいる部所の数少ない女性先輩だ。 あっ、言い忘れたけど、僕は竹中宏伸。社会人一年生。だけど、いいかげん学生気分は抜けている。

 学生みたいな雰囲気もなくなっていると思うごくごく平凡なサラリーマンだ。ただし、ただ一点だけを除けば、の話だけど……。              

「で、どう? 味の方は? それから気分の方も?」 

今野さんはなんだかニヤニヤとして、僕の顔を覗き込んでくる。

「えっ? 味って……。まあ普通に甘くておいしいですけど……気分って?」

「ふふ、それね、ガラナチョコなの」

「って? 有名なブランドチョコなんですか?」

「ゲラゲラ。やだぁ、知らないのぉ?」       

今野さんは文字通り腹を抱えて笑い出した。

「えっ? えっ? 何?」

 笑われて僕はムッとした。それ以上に嫌な予感もして、ついつい今野さんを睨んでしまった。

「本当に知らないの?」              

僕の睨みなんてまるで効かない。今野さんはなおも笑いながら僕を見て、言葉を続けた。

「ガラナチョコっていったら、早い話がHな気分にさせるチョコよ」                 

「はっ?」                    

僕はそう言われてもピンとこず、しばらくただ今野さんを見詰めていた。

「あの……、Hな気分って、ひょっとして催淫効果があるとかっていう、あの……」

「そう、そういうチョコ」

「ええっーっ!」

 何感がえてるんだ今野さんはっ! ここは、会社でまだ昼休みも終わったばかりで、まだこれから仕事もあるし……。

 僕は大声を出したきり、頭の中でそんなことをパニクリながら考えるのが精一杯で今野さんに抗議の一つも言えずにいた。

「ちょっと、試したい相手がいるんだけどさ、本当に効くかどうかわからないから、竹中で実験しようかと思って……んっ? どうしたの竹中? 固まっちゃって……。まさかもう効いてきたとか?」

「そ、そんなことあるわけないじゃないですかっ!」 

僕はようやく今野さんに言い返すことができた。

「へえ? 今野さん、ガラナチョコを試したい相手って……、好きな人でもいるんだ? なんか意外だな、今野さんって、男は邪魔、私は仕事に生きるのって感じがあったから」

 僕がようやく言い返したのと同時にそう言って喫煙コーナーに現れた男がいた。

 南瀬戸和人。僕らの部所の室長だ。そして僕をただの平凡なサラリーマンにしてくれない原因を作った男でもある。

 原因を作ったというか、原因そのものというのか、元凶なのか……、う〜ん、要するに恥ずかしいけど、僕の恋人なんだ。                  

室長と恋人同士になっちゃったおかげで僕はもう平凡とは言いがたいサラリーマンなわけで……。

 まあ、きっかけは僕の方っていうか、僕が酔っ払って人前で室長とキスしちゃったりとか、酔った勢いでHしちゃったりとかなんだけど、今では社内でも公然の秘密の仲なんだ。           

そのチーフは何故か真夏でもないのに棒アイスをしゃぶっている。

 一緒に社員食堂でB定食を食べたあと、先に喫煙所行っててって言ってどこかへ消えたと思っていたら、ひょっとして近所のコンビニにアイスを買いに行ってたわけ?                    

「やだな、室長、私そんなに男いらないって顔してます。私にだって好きな人の一人や二人、いますよ」 

今野さんは頬を膨らませてムクれている。

「本当はチーフが好みだったんだけど、室長は私が入社した時からカミングアウトしていたし、今は竹中のモノだし。あっ、違うか、竹中が室長のモノなんだ」

 なんか僕、モノ扱いされている。

「今野さんに好みとかって言われるのって、ちょっと光栄だな」

 室長は社交辞令なのか、本気なのかわからないけどそう言ってアイスをペロリ。

 ミルク味らしい棒アイスを舐める室長の舌先が嫌に扇情的だ。なんだかとってもいやらしい。

 ガラナチョコだ、Hな気分になるだの言われたせいだろうか。見ているだけで全身が微かに熱くなってしまう。                      

室長の舌先がアイスの先端を舐め上げる。そこから溶けたミルク状のアイスがとろりと溢れるように流れ出る。まるでそれは……。             

僕のを室長が舐めている。           

僕が室長のを舐めている。

 舐めたい……。舐められたい……。

 棒アイスが室長の口にくわえられ、舌がなまめかしく溶けたアイスをしゃぶるたびに僕はそんな衝動に取り憑かれ、たまらなくなっていた。        

全身に微かに回っていた熱さが、ある一点に、集中し始める。

 集中したそこ……、僕のペニスがズキンズキンと脈打ち始める。硬く勃ち始め、痛いくらいになってくる。 

勃ってしまったのがズボンの上からわかってしまいそうだ。

 僕は思わず身を小さくした。前屈みになって勃ってしまったのがバレでもしたら……。         

「んっ? どうした?」

 そんな僕の様子に気付き、室長が僕の顔を覗き込んできた。

「ちょ、ちょっと……、なんかお腹の具合が……」

 僕はそう、言い捨てるように言うと室長や今野さんに背を向けてトイレの隣にある資料室へ向かってダッシュした。

 本当はお腹の具合が悪いわけじゃない。お腹の具合が悪かったら素直にトイレへ飛び込んでいる。

 本当は……。                   

僕はトイレよりも人が入ってくる可能性の少ない資料室の奥でズボンのジッパーを降ろした。

 ズボンの中、僕のトランクスの前は既に薄っすらと染みになっている。

 こうなってしまったら、もう給ってしまった物を出すしかない。

 こんな所で、こんなことをするなんてとても恥ずかしくって、なんだか涙が出てきそうだったけど、なんか背に腹はかえられないって感じだ。

 だって僕のペニスはもうとっても硬くって、下着に染みを作るほどになっているんだもん。

 僕は染みになっちゃったトランクスから自分のモノを取り出した。

 とっても熱いし、取り出すために触れただけでも僕の身体に甘い快感が走った。

 今野さんがいけないんだ。

 今野さんがガラナチョコなんかを僕に食べさせるから……。

 室長がいけないんだ。僕の目の前であんなアイスを食べるから……。

 僕がこんなことをしてしまうのは……。

 僕がやりたがりの淫乱だからじゃない。昼真っからペニスをおっ勃てちゃう変態だからなんかじゃない。みんながいけないんだ。今野さんと室長がいけないんだ。

 僕はそんなことを思いながら自分のペニスに指を這わせた。

 痺れる。気持ちがいい。

「あぁ……」

 思わず声が洩れてしまう。            

先端からトロトロと汁がこぼれ出す。それが僕の指を濡らす。

 そうやって先端を擦って、根元からペニスをしごき上げていると、身体の別な部分にも熱がこもり、僕はそこも刺激したくなった。

 ペニス意外に熱くなったそこ、アナルにも刺激が欲しくなったのだ。

 ああ、嫌だ。どうしよう……。

 ガラナチョコのせいにしろ、室長のせいにしろ、僕ってやっぱり変態だ。

 昼真っから、会社で、こんな……。

 でも我慢できない、アナルも疼いている。欲しがっている。

 僕は疼きに負けて、ズボンもパンツも足元まで降ろしてしまった。

 とってもみっともない格好だと思う。それに、誰かがいきなり入ってきてもこれじゃあすぐに逃げ出せない。降ろしたズボンとパンツが邪魔で転んでしまう。 

ああ、僕って馬鹿……。そんなこと考えながらも手を動かして……、指をアナルに入れようとしゃぶっているなんて……。

「俺がしゃぶってやろうか」

 耳の後ろで不意にそんな声が上がった。

「ひっ!」

 誰だ? 見られた?

 僕は驚きと羞恥で、掠れた声を上げたまま固まってしまった。

 もちろんあんなに勃っていたペニスだって、縮んでいる。といっても、完全に縮んだわけじゃない。半勃ち状態だ。

 それって、とってもみっともない。情けない。

「どうした宏伸? 続きした方がいいだろ?」

 耳元で甘い声がそう囁く。

 室長だ。室長だったんだ。

 半ばほっとし、でも残りの半分は恥ずかしくて僕は振り返ることができない。             

 だって、室長以外の社員に見られたら、もう明日から会社には出てこれないけど、でも大好きな室長にこんな姿を見られるのも……。

「こんな状態じゃ、午後からの仕事にさしつかえるだろ?」

 室長はなおも甘く囁いて、後ろから僕を抱くと、僕の半分うなだれたペニスを握ってきた。

「あっ……」

 とたんに僕のペニスは力を取り戻し、ムクムクと頭をもたげる。

「ほら、こんなになってる……」

 室長の指が僕のペニスの先端を擦った。そこから新たな汁がヌルリと滲み出る。          

「んっ……。駄目……室長、こんなとこで……」

 こんな所で一人Hをしていたのは僕だ。だからいまさらこんな所で駄目って言うのも変だったけど、でもやっぱり駄目なもんは駄目だ。

 だって室長と一緒だと、きっとこのままだと、僕は、僕は室長を求めてしまう。

 欲しくなってしまう。

 そしたら会社で……ってことで、やっぱりここでそんなことをするわけにはいかないし……。

「でもこのままじゃ、宏伸大変だろ? ガラナチョコはね、一度食べると、ちゃんとイクまでその効力が続いちゃうんだよ」

「えっ? 嘘?」

「うん。嘘だ」

 室長は僕の耳元で笑う。その息づかいがくすぐったくて、気持ちよくて、僕はぞくぞくと鳥肌を立ててしまう。

 僕はもうどうしていいかわからず、室長のされるがままになっていた。              

「でも、今野さんには感謝だな。本当を言うと、一度こうして会社で宏伸とHしたいって思ってたんだ」

 室長はそんな恥ずかしいことを平気で言って、僕を振り向かせると僕にキスしてきた。

 キスは甘い。室長がさっきまで食べていたアイスの味がする。甘い、甘いミルク味だ。

 室長の口にくわえられてしゃぶられて溶けていたアイスの味……。

 僕も室長にくわえられてしゃぶられて溶けてしまいたい。

 ううん、もう僕は溶けている。とろけている。

「ああ、室長……。僕のもしゃぶって……」

 チーフの唇が僕の唇から離れたとたん僕はそう甘い声でおねだりしていた。

 飲んで酔っ払っているわけじゃないのに、酔っ払っている時の僕と今の僕は同じだ。

 恥ずかしいことが平気になっている。

 これってきっとガラナチョコのせいだ。僕はチョコに酔ったんだ。

「さっきのアイスみたいにか?」

「うん」

 笑いながら聞いてくる室長に僕は耳まで赤くして頷く。

「いいよ。宏伸がもうたくさん、って言うまでしゃぶってあげる」

 室長の頭が下がる。僕のペニスは期待して、ますます頭をもたげる。

 室長の前髪が僕の陰毛を擦る。指が僕のペニスに添えられる。そして舌が……。

「あっあぁ……」

 チロチロと先端を舐められ、僕は震えた。

 舐められるだけでなく、室長は僕のモノを喉もとまでくわえたり、唇をすぼめて、上下させたり、吸ったりしている。

 グポッとか、ブチュッとか、いやらしい音がそのたびに響いて、たまらなくいやらしい。

 僕の口からも絶え間なく甘い声が洩れ続ける。

 あんまり大きな声を出したら誰かに聞かれちゃう。 

僕は自分の口に指をくわえて、必死に出る声を抑える。                      

「んっ、あっ……」

 これ以上室長に舐められていると、堪え切れずに大声が出ちゃいそうだった。それに室長の口の中にも出しちゃいそうだった。

 だから僕はちょっとばかり逃げを打つ。

「あっ、室長。室長のも……、室長のも舐めたい……」

 そう言うのはちょっと恥ずかしかったし勇気がいったけど、でも……。

 それに僕は実際室長のをしゃぶりたくなっていたんだ。

「舐めて……くれるの?」

 濡れた口元をぬぐいながら室長は顔を上げた。僕はゆっくり頷きひざまづく。ひざまづいた僕と入れ替わりに室長は立ち上がる。            

僕は室長のズボンのベルトをはずし、ジッパーを降ろす。

 室長は黒いビキニパンツを履いている。そこからペニスが膨らんではみ出しそうになっている。

 そっとパンツをずり下げると、室長のペニスは勢いよく僕の前に飛び出てくる。室長は無意識に僕の頭を抱え込む。

 僕は室長にされるがままに頭を差し出し、舌を這わせた。

「ふっ……」

 室長の口から熱い吐息が洩れる。僕はそれが嬉しい。室長も気持ちよくなっているんだと思うと僕まで気持ちよくなる。

 僕は思いっきり室長を味わう。アイスと違ってとても熱い棒をしゃぶる。

「ああ、宏伸、いいよ。気持ちいい……。ああ……でも駄目だ……」

 これからもっと室長をしゃぶろうと思っていたのに室長は無情にも僕の頭を掴んでペニスから引きはがした。

「出そうなんだ宏伸……。でも出すんだったら、宏伸の中がいい……」

 そう言って室長は僕の後ろにまわり、僕の手を壁につかせた。

 背中から室長の手が回って来て、僕のペニスを掴む。後ろから室長の指が伸びてきて、僕のアナルに触れる。ねじ込まれる。

 軽く指一本をねじ込まれただけなのに僕はあっという間に上りつめてしまう。

 そして……。                  

「んっ、くっ、いいよ、室長。気持ちいい……」

 立ったまま、しかも壁に両手をついた姿のまま、僕は後ろからチーフに激しく攻められていた。

 ここは会社の中だし、まだ昼なのに、僕は、僕とチーフは……。

 絶対にチョコのせいだ。あのチョコのせいだ。

「宏伸、宏伸……。俺も……。いいよ。すごく……」

「あっ、室長。駄目。いっちゃう、出ちゃうっ!」 

思わず大声になり、僕は弾けた。

 僕のペニスを握るチーフの手に、激しく真っ白な樹液をまき散らす。

「うっく……。宏伸、俺も……」

 続いて室長が弾けた。僕の中で。

 会社の中でなんて、とっても背徳的だけど、なんだかこれから病みつきになりそうな僕達だった。  



 正月明け

取り憑

うた



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